世代間ギャップ?「個人情報です」と言う言葉は、相手を拒絶する言葉なので使わないようにしよう。テレビのせい? 学校のせい? PTAのせい? 「個人情報です」と学生は気軽に言うけれど、嫌われるのでやめよう。

PTA役員になると、パートや会社を休ませてまでPTAの仕事をさせようとする人が沢山いる。「鈴木さんって、どんな仕事してるの?」と、しつこく聞いてくる。「えっ」と、びっくりした態度をとって、無視した。

私よりも5歳年下の世代の人たちは「個人情報です」という言葉を使っていた。「個人情報」という言葉を出せば、これ以上聞かれないので、便利な言葉だと思う。しかし、「個人情報」という言葉は、きつい言葉なので、使う気にはなれなかった。

 

当たり前のように「個人情報」という言葉を使う人たちがいるけれど、中小企業やフリーランスの人たちは「個人情報です」という言葉には、気をつけなくてはいけない。お年寄りに嫌われる言葉なので、下手をすると仕事を失うことになる。

 

うちの息子は、内装職人に弟子入りしている。

お客さんとおしゃべりをして「どこから来たの?」と聞かれて、「個人情報です」と答えてしまった。お客さんは怒って、リフォーム会社に「どこに住んでいるか言えないような奴を呼ぶな」と、クレームの電話をかけてきた。親方は、お客さんに謝りに行って、息子は謹慎処分になった。私の息子でなければ、クビだった。このことを、夫や息子にしゃべっても、何が悪いのか、なかなか理解してもらえなかった。

親方はトップの職人なので、リフォーム会社としては手放したくないから、何があったのか説明してもらえた。他の職人だったら、何があったのか説明なく、いきなり仕事が来なくなるところだった。

職人は、犯罪者だった人の比率が高い。内装職人は、収入が高くて仕事が厳しくないので犯罪者だった人の比率が低いけれど、外装職人は、収入が低くて仕事が過酷なので、異様に犯罪者と詐欺師が多い。

外装職人が働ける期間は、年間260日程度。雨が降ったり、雪が降ったり、働けない期間がある。真冬の寒い中、または、真夏日36度の炎天下の下で、働かなくてはいけない。かなり過酷だ。外装は、上手か下手か、職人の腕が分かりにくい。特に、塗装職人は、どれだけ手抜きをしているのか分からない。

内装職人は、暖房やクーラーの効いた部屋で仕事ができるので、それほど過酷ではない。しかし、内装は、目に付きやすいので、腕の良し悪しが、はっきりと分かる。かなり上手じゃないと、仕事がもらえないので、それなりに修行が必要になる。

大企業の社員や公務員は、子供の頃から長時間勉強して、やっとなれた仕事なので、ほんのささいなことでクビになるのが心配で、犯罪行為に手を染める人は滅多にいない。大企業や公務員は、仕事が楽で、給料も高く、安定しているので、あえて詐欺をして、お金を儲けようとする人は、少ない。

 

マンションに住んでいた時、「塗装の作業中は、泥棒に入られますから、窓に鍵をかけてください。泥棒されても責任は取れません。」などと張り紙をされていた。

塗装は集団で作業をするので、他の職人と比べると、塗装職人になるのは簡単だけど、塗装職人は、仕事がきつくて、儲からないから、仕事を辞める人も多い。気軽に職場を変えることができるので、例えば、ある地域で詐欺をして、バレても引っ越せばリセットされる。

だから、自分の住んでいる所や家族など、さらけ出せない人だと信用ができない。

 

「なんで、職人になったの?」と聞かれたら、「お金が儲かるからです」などと息子が答えるので「親戚のほとんどが大家をしているからです」と、とっさに言えるように何度も練習をした。

不良で、どうしょうもなくて職人になったわけではないので、お客さんを安心させるために、「親戚のほとんどが大家さん」ということをアピールした方が良いと息子に説明した。

ほとんどの人が学歴コンプレックスを持っていて、大企業や公務員や一流大学の人の自慢はむかつくけれど、中卒の職人が自慢するのは、学歴コンプレックスを刺激されないから嫌がられない。逆に、学歴がなくても、勉強ができて、がんばっている人は、応援したくなるから、どんどん自慢して良いことを息子に説明した。

「数学と理科は90点以上で、算盤は有段者なので、暗算で分数も方程式もできます。日商簿記2級にも合格しています。」と、自慢するように勧めた。

高校に行けたのに、高校に行かなかった理由を「勉強が嫌いだから」ではなく、「2020年から不景気になるのは分かっていたので、不景気になる前に仕事をしたかった」と、しゃべる訓練もした。

親兄弟が立派で、貧乏ではないから、泥棒じゃないアピールも練習した。「父は電車の開発者、母は大家、上の姉は精密機械の開発者、下の姉は公務員」と、個人情報だと思ってる内容をベラベラ喋るよう説得した。

何かあると若い子のせいにされるので、ちゃんとした家の子だとアピールしないと、ぬれぎぬを着せられる。

設備屋さんが、お客さんの家で間違ったドアを開けてしまった。娘さんが病気で寝ていたらしい。さっさと謝ればいいのに謝らなかった。30代の人がそんな非常識なことをするとは思えないので、うちの息子のせいにされた。たまたま親方がその様子を見ていたので、息子は大丈夫だったけれど、その設備屋さんには次から仕事が来なくなるらしい。30代になると誰も注意をしてくれる人がいないので、ちょっとしたことで、仕事がなくなる。

 

家をこれから借りる人も、個人情報を出した方がいい。出さないと、不動産屋と大家は不審に思うし、嫌われる。

不動産屋に「どこにお勤めですか?」と聞かれて、賃貸物件を見に来た人が「個人情報です」と答えた。

不動産屋は『会社名すら言えないなんて、この人はダメだ』と思って、いい加減な説明しかしなかった。でも、申し込み用紙を見ると、良い会社に15年も勤めていて、賃貸の借り換え理由も転勤で、保証人もしっかりしている。何も問題ない。「だったら最初から言えばいいじゃないの、むかつく、大家さんに変なこと言っちゃったじゃない」と、不動産屋は言っていた。

詐欺師ほど、自分の都合の良い情報を開示して、問題ない人ほど、情報を流さない。

 

大企業の社員は、物をもらうことやおごってもらう事を禁止している会社がかなりある。当然、公務員は、公務員倫理規定法という厳しい法律があって、禁止されている。社員を守るための規則で、その規則のおかげで、受け取りを拒否しやすい。

逆に、中小企業やフリーランスの人たちは、持ち帰るのが大変なもの以外は、受け取らなくてはいけない。お客さんの好意を拒否したら、嫌われる。いらないものでも「ありがとうございます」と言って、受け取るように、息子と練習をしている。

 

大企業の社員や公務員は、書類仕事をしている人が多いので、挨拶は声を出さずに、会釈だけで済ませている人が多いい。中小企業やフリーランスは、事務仕事の比率が低くなるので、「会釈は挨拶ではない」と思っている職業の人と接する機会が多いから、「おはようございます」「お疲れ様です」と大きな声で言わなくてはいけない。職場によっては、大声で挨拶しないと無視されたと勘違いされる。

大企業の社員や公務員は「個人情報です」と気軽に言えるけれど、職人が「個人情報です」などと言ったら、怪しい奴だと思われる。

 PTAでは、これ以上こき使われたくなかったし、誰とも仲良くならなくても構わないから、自分の個人情報を流さなかった。

個人情報を出さないで、人と仲良くなるのは難しい。だから「個人情報です」という言葉は嫌われる。

「個人情報です」という言葉は、相手を拒絶する言葉なので、使う場所を間違えると苦労する。

普段から、「個人情報です」と言う言葉を使うのはやめよう。